消費者金融―実態と救済
宇都宮 健児
岩波書店 刊
発売日 2002-04
クレサラ系弁護士による消費者金融論 2003-06-08
著者は、クレジット・サラ金問題を専門的に扱ういわゆるクレサラ系弁護士の代表格。
本書は、同趣旨の記述があちこちに繰り返し現れ、構成面で覆いがたい難点を含んでいる。また、激しい文章をもって展開している論理はかなり独善的で、説得力に富むとは言い難い。物事を論理的に考える習慣のある読者ならば、読み続けるのがあほらしくなるかも知れない。主張している内容も一面的で、本書のみをもって消費者金融や自己破産増加の問題を考えるのは危険である。
にもかかわらず、普段主として消費者金融業界の主張を聞いている方には、本書を一読されることを強く勧めたい。業界関係者が進んで言おうとしない事実が書かれている。消費者金融業界が言うことだけを聞くことも同様に危険である。弁護士が書いた本だけに、法律面の記述は詳しい。
業界の実態を暴く 2002-08-23
著者は、弁護士で、これまでに消費者金融、つまりサラ金によって多重債務者に陥った人々を何人も助けてこられた方だそうです。バブル崩壊後も、消費者金融会社は拡大を続け、その数、業界の地位ともども上昇しているように見えます。その背景には、ノルマを達成するために、広告などを使ってイメージ向上に努めながら、積極的に貸し出そうとする営業姿勢がある一方で、人々の全般的な雇用・所得の不安定化も貢献しているようです。最初は軽い気持ちで少額だけ借りるつもりが、年利20%を超える高金利の支払いに追われ、あっという間に多数の消費者金融会社からの借り入れ返済を自転車操業で行う状態に陥り、挙句の果てには自殺、夜逃げなどといった悲惨な末路を迎える人も少なくないとされています。
著者よると、消費者金融会社の中には、法律で定められた上限金利を上回る法律違反の会社もあり、取立て方法も悪質なものが少なくないそうです。これに対し、消費者金融に関する知識を得るための教育もないため、20代の若者の利用が増えていることが問題視されています。最近では、映画「夜逃げ屋本舗」や小説「火車」など、消費者金融の悪質な手口にはまり、抜け出すことのできなくなった人々を描いた作品も出てきていますが、CMでのイメージで軽くお金を借りる前に、読んでおきたい一冊だと思います。
サラ金に出かける前に読みましょう 2002-06-22
消費者金融に絡む事件・事故を数多く扱ってきた弁護士による書であり、内容が具体的、実務的でわかりやすい。消費者金融で金を借りることが、どれほど借り手にとって不利なことなのか、一度借りてしまうと、その後どのような事態が待ち構えているのか、といったことがよくわかる。お金に困って、これから消費者金融のお世話になろうかと考えているような人に、是非一読を勧めたい。そして、借りずに済ませる方策を考えてもらいたい。しかし、たぶん、サラ金に行くような人は、そもそもこの本の存在すら知らないであろう。
但し、なぜ、消費者金融(正確には大手消費者金融業者)がこれほど繁盛しているかということへの洞察は弱い。また、繰り返し似たような記述が表れるのも目障りではある。そのせいかどうか知らないが、読後感がいまひとつすっきりしない。
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