キャッシュカードがあぶない
柳田 邦男
文藝春秋 刊
発売日 2004-12
新聞報道だけでは分からない部分が明白に 2006-04-23
偽造キャッシュカード被害をまとめた本。
新聞報道だけではわからない、被害者の悲惨な実態、銀行・警察の酷薄な対応が手に取るように伝わってくる。
冒頭に紹介される方は、妻が余命2ヶ月の中、銀行口座から3000万円を盗まれている。
そんな彼に、銀行の取った対応は。警察は?
法律の不備、行政の不備はこんな悲惨な状況を生むのかと考えると身が引き締まる思いがする。
法律上は、口座から勝手にお金を下ろされた人は被害者にはならないのだ。その結果生じるたらいまわし。
彼らの痛みを思うと胸が潰れる思いがする。
良くまとまっており、読みやすい。
銀行について、金融系の犯罪に興味がある人にオススメ。
内容はいいけど、デザイン・値段に難アリ 2006-02-24
面白いですよ。
読んで損なし。
高名な作家が暴露しないと動かない日本の体質にがっかり。
星の理由は、本の中身はスカスカなのに値段高すぎ、デザインセンスゼロ。
内容はいいのにねぇ。本当に大衆に知らしめたいなら1000円以下にしなさいよ。
槍玉の先にあるものを考えたい 2005-04-11
柳田邦男も随分特殊な問題を取り上げたなあと思って読み始めたが、とても説得力があるし、かなり本質的な問題を提起している。「キャッシュカード被害者たちは、・・・40年前の公害被害者たちと同じような状況に置かれている」という指摘は、鋭い。
槍玉にあげられているのは、
1 まずは、銀行。情報を隠し、責任を消費者(の注意)に転嫁し、規制にも業界をあげて潰してきた。
2 次に、警察。被害者を救済するばかりではなく、やっかいもの扱いをして、泣き寝入りさせたり、言葉で傷つけたり、証拠を残す対策をとらず放置した。
3 金融庁。外国で消費者保護のための規制があることを知っていながら、銀行の反発を受けてたなざらしにした。
4 裁判所。形式的な法解釈により、真の被害者の救済ができなかった。
5 国会。何もしてこなかった。
しかしだ。さらに、何故こんなことになったのかを考えたい。単に、銀行などを槍玉にあげて済む問題ではない。
一つには、日本が安全だ(とみんな思っている)からだ。外国(途上国)を含む)で、カードに関する規制が進んでいるのは、カード犯罪が常識だからだ。別に、日本が遅れているからではない。
それと、妙な平等主義、大衆主義がある。銀行だって馬鹿でないから、カード詐欺に備えて預金者から保険料をとりたいのだろうが、「預金者から保険料をとるなんてなんて銀行だ」という批判が怖かったのだろう。
さらに、国民の間に技術信仰がある。欠陥があることを前提にしてた仕組み(フェール・セーフ)を考えていない。
これらの問題は日本人の意識に根着いているので、なかなか払拭できない。しかし、払拭できないとすれば、形を変えて同じ問題が出てくるだろう。
それにしてもこの本が契機となって銀行の姿勢が変化したのだとすれば、「ペンは剣より強し」を地で行っている。
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